ACTとは?人生を健康に生きるための「心との付き合い方」を本から学んでみた

「健康に生きたい」

そう考えたとき、何を思い浮かべますか?

運動する。

食生活を整える。

しっかり眠る。

もちろん、どれも大切です。

でも最近、私はもう一つ大事なものがあると思っています。

それが、心の健康です。

今回読んだのが、武藤崇著『ACT メンタルエクササイズ』。

この本で紹介されているのが、ACT(アクセプタンス&コミットメント・セラピー)という心理療法です。

ACTについて学んで面白いと思ったのは、

「不安やストレスをなくしてから幸せになろう」

という考え方ではないこと。

不安があってもいい。

嫌なことを考えてしまってもいい。

それでも、自分が大切にしたい方向へ進んでいく。

そんな心との付き合い方を身につけていくのがACTです。

この記事では、ACTとは何なのかという基本から、日常生活で取り入れられるACTの実践方法やエクササイズまで、初心者向けに分かりやすく紹介します。

「嫌な気持ちがある=健康ではない」

とは限りません。

嫌な気持ちがあったって、人生は前へ進めます。

目次

ACTとは?心を健康に保つための新しい考え方

ACT(アクセプタンス&コミットメント・セラピー)とは

ACTとは、Acceptance and Commitment Therapy(アクセプタンス&コミットメント・セラピー)の略称です。

読み方は「アクト」。

ACTは認知行動療法の流れをくむ心理療法の一つで、不安やストレスなど、さまざまな心の問題に対して研究されてきました。

名前だけ聞くと難しそうですよね。

私も最初は、

「アクセプタンス&コミットメント……長い!(笑)」

と思いました。

でも、考え方は意外とシンプルです。

現在の自分の体験を受け入れ、自分が大切にしたいことを明確にして、それに沿って行動していく。

これがACTの基本です。

ACTは「嫌な感情をなくす」ための方法ではない

ここがACTの面白いところです。

普通は、

「不安だから、不安をなくしたい」

「嫌なことを考えてしまうから、考えないようにしたい」

と思いますよね。

ところがACTでは、嫌な感情そのものをなくすことを第一の目的にはしません。

不安になる。

イライラする。

落ち込む。

「自分はダメだ」と思ってしまう。

人間なのだから、そんなこともあります。

ACTでは、

「その感情がある状態でも、自分が大切にしたいことのために何ができるか?」

を考えていきます。

ACTが目指す「心理的柔軟性」とは

ACTで重要になるのが、心理的柔軟性という考え方です。

簡単に言えば、

嫌な思考や感情に振り回されすぎず、そのときの状況に応じて、自分の価値に沿った行動を選べる力

と考えると分かりやすいでしょう。

私は本を読みながら、人生を車の運転に例えると分かりやすいなと思いました。

人生という道を走っていると、

「失敗したらどうする?」

「やめた方がいいんじゃない?」

「お前には無理だぞ」

と、頭の中からいろいろな声が聞こえてきます。

なかなかうるさい同乗者です(笑)。

ACTは、その声を完全に黙らせる方法というより、声が聞こえていても、自分が進みたい方向へハンドルを切るための方法なのだと思います。

なぜ不安やストレスをなくそうとすると苦しくなるのか

人間はつい「正しい答え」を探してしまう

私たちは言葉を使って考えます。

これは人間の素晴らしい能力です。

仕事でも、

「どうすれば効率がいい?」

「どちらが正解?」

と考えることで、問題を解決できます。

ところが、自分の心についても同じことをしてしまいます。

「どうすれば不安にならない?」

「このモヤモヤを消す正しい方法は?」

そして答えを探し続けます。

でも、心には数学の問題のような模範解答がないことも多い。

考えて、考えて、考えて……。

気づけば、

悩みを解決するために悩んでいる。

そんな状態になることがあります。

頭の中に浮かぶ思考や感情は完全にはコントロールできない

試しに、

「今から絶対に白いクマを想像しないでください」

と言われたらどうでしょう。

……白いクマ、出てきませんでしたか?(笑)

「考えないようにしよう」と意識した瞬間、その対象を思い浮かべてしまう。

私たちの頭の中には、自分の意思とは関係なく、さまざまな思考が浮かびます。

不安や怒りなどの感情についても、スイッチのように自由自在にオン・オフできるものではありません。

ネガティブな思考を無理に消そうとしなくていい

そこでACTでは、

ネガティブな思考を消すことより、それとの付き合い方を変えていきます。

「不安になってはいけない」

ではなく、

「今、不安なんだな」

と気づく。

そして、

「不安はある。それで私はどうする?」

と考える。

この発想の転換が、ACTを理解する大きなポイントです。

ACTで大切な6つの考え方

ACTの心理的柔軟性は、主に6つのプロセスから説明されます。

専門用語もありますが、一つずつ見るとそれほど難しくありません。

①脱フュージョン|自分の「考え」と距離をとる

フュージョンとは、自分の思考と一体化してしまった状態です。

たとえば、

「失敗するかもしれない」

と思ったとします。

するといつの間にか、

「失敗するに違いない」

という事実のように感じてしまう。

そこで、思考から少し距離を取ります。

「私はダメだ」から「私は今、“ダメだ”と考えている」へ

「私はダメだ」

ではなく、

「私は今、“自分はダメだ”という考えを持っている」

と言い換えてみます。

たったこれだけです。

でも、

自分=考え

だったものが、

自分の中に一つの考えがある

という関係に変わります。

頭に浮かんだ言葉は、必ずしも事実ではありません。

②アクセプタンス|嫌な感情があることを受け入れる

アクセプタンスとは、嫌な感情を「好きになりましょう」という意味ではありません。

嫌なものは嫌でいい。

ただ、

「今、自分の中にこの感情がある」

という事実を認めてみます。

不安やストレスを追い払うことをやめてみる

不安が出てきた。

「消えろ!」

まだいる。

「早く消えろ!」

もっと気になる(笑)。

そんな経験はないでしょうか。

ACTでは、不安を追い払うためにエネルギーを使い続けるのではなく、その不安があることを認めながら、自分の行動へ意識を戻していきます。

③観察する自己|自分の思考や感情を眺めてみる

私たちは、

「不安だ」

「腹が立つ」

と感情の中に入り込んでしまいます。

そこで、自分自身を少し離れたところから観察します。

「考えている自分」ではなく「観察している自分」に気づく

「私は不安だ」

から、

「私は今、不安を感じているな」

へ。

「ものすごく腹が立つ!」

から、

「かなり怒ってるな、私」

へ。

実況中継するようなイメージでもいいかもしれません。

感情そのものになるのではなく、感情を感じている自分に気づくわけです。

④「今、この瞬間」に意識を向ける

人間の頭は、とても忙しい。

過去について、

「あのとき、ああしていれば……」

未来について、

「もし失敗したら……」

気づけば、過去と未来を行ったり来たりしています。

過去や未来ではなく「今」に戻ってくる

そんなときは、

今、何が見えるか。

何が聞こえるか。

どんな呼吸をしているか。

体にどんな感覚があるか。

「今、この瞬間」へ注意を戻してみます。

過去を消すわけでも、未来を考えないようにするわけでもありません。

必要なときに現在へ戻れるようにする。

これもACTの重要な考え方です。

⑤価値|自分はどんな人でありたいのかを考える

ここからACTは少し面白くなってきます。

単に、

「ストレスを減らしましょう」

で終わらないからです。

ACTでは、

「あなたは、どんな人でありたいですか?」

と考えます。

人間関係・仕事・健康などから自分の価値を探してみる

たとえば、

家族を大切にする人でありたい。

誰かの役に立てる人でありたい。

誠実でありたい。

好奇心を持っていたい。

健康を大切にしたい。

価値に正解はありません。

自分が、

「こういう人でありたい」

と思える方向を探していきます。

⑥コミットされた行為|価値に向かって実際に行動する

価値が見つかったら、最後は行動です。

ここがACTの「Commitment」の部分です。

大きな目標ではなく「今できる小さな一歩」から始める

健康を大切にしたいなら、

「毎日1時間運動する!」

といきなり大きな目標を立てなくてもいい。

今日は10分歩いてみる。

家族を大切にしたいなら、

今日は「ありがとう」と伝える。

小さくていいのです。

価値の方向へ実際に一歩進むこと。

これが重要です。

今日からできるACTのメンタルエクササイズ7選

『ACT メンタルエクササイズ』には、ACTの考え方を体験するためのさまざまなエクササイズが登場します。

ここでは、私が本を読んで特に日常で使いやすそうだと思った考え方をもとに、簡単にできる方法を紹介します。

無理に全部やる必要はありません。

気になるものを一つ試すくらいで十分です。

①マインドさんのおしゃべりを観察する

私たちの頭の中では、一日中いろいろな言葉が飛び交っています。

「あれやらなきゃ」

「失敗したらどうしよう」

「あの人、どう思ってるかな」

なかなかのおしゃべり好きです(笑)。

頭の中の声に気づき、名前をつけてみる

まずは、

「あ、また頭の中でしゃべってるな」

と気づいてみます。

本では、この頭の働きを「マインドさん」として扱っています。

マインドさんの話を全部真に受ける必要はありません。

「はいはい、今日は心配モードですね」

くらいに眺めてみる。

それだけでも、思考との距離が少し変わります。

②「今、ここ」に意識を戻す

考え事が止まらなくなったら、頭の中から現在へ戻ってみます。

呼吸・体の感覚・五感に注意を向ける

自分の呼吸を感じる。

足の裏が床に触れている感覚を感じる。

周囲の音を聞く。

目の前にあるものを見る。

特別な道具は必要ありません。

数分でも、自分の注意を「今、ここ」へ戻してみます。

③何度も現れる「妖怪マインド」に気づく

同じ不安が何度も出てくることがあります。

「失敗するぞ」

「嫌われるぞ」

「また悪いことが起きるぞ」

追い払っても、また出てくる。

まるで妖怪です(笑)。

繰り返す思考に名前をつけて客観視する

本では、何度も繰り返し現れるマインドを「妖怪マインド」と表現しています。

そこで、

「また失敗妖怪が来た」

「心配妖怪、今日も元気だな」

と名前をつけてみる。

重要なのは、妖怪を倒すことではありません。

「これは自分の頭が繰り返している思考なんだ」

と気づくことです。

④ネガティブな思考を無理に追い払わない

嫌な考えが浮かぶと、つい消したくなります。

でもACTでは、別の方法を試します。

頭の中に浮かべたまま別の行動をしてみる

不安がある。

でも、お茶を飲む。

不安がある。

でも、仕事を始める。

不安がある。

でも、散歩へ行く。

ポイントは、

「不安がなくなったら行動する」から「不安があっても行動できる」へ変えること。

これは私がACTで特に面白いと思った部分です。

⑤思考と距離を置く練習をする

頭の中の言葉に飲み込まれそうになったら、その言葉を少し違った形で扱ってみます。

頭の中の言葉を文字として眺めてみる

たとえば、

「失敗するかもしれない」

という言葉を、頭の中に文字として浮かべてみる。

その文字が目の前に置かれているように眺めます。

思考を「現実そのもの」ではなく、頭の中に現れた言葉として見る練習です。

⑥感情の居場所を作る

不安や悲しみを感じたとき、

「こんな気持ちは嫌だ」

と追い払いたくなります。

そんなときは、少し違うことをしてみます。

感情を消そうとせず体のどこにあるのか観察する

胸が重い。

喉が詰まる感じがする。

お腹がギュッとなっている。

まず、その感覚が体のどこにあるか探してみます。

そして、無理に消そうとせず、

「今ここに、この感覚があるんだな」

と観察します。

⑦痛みや不快感に優しく触れる

感情は、体の感覚として現れることもあります。

そんなときは、その場所に意識を向けてみます。

苦しさを感じる場所に手を当ててみる

胸やお腹など、つらさを感じる場所にそっと手を当てます。

そして、その感覚をしばらく観察します。

大切なのは、

「早く治れ!」

と命令することではありません。

自分の体に、

「ここにつらさがあるんだな」

と気づいてあげるイメージです。

ACTで重要な「価値」とは?自分が進みたい方向を見つけよう

「目標」と「価値」は何が違う?

ACTを理解するうえで、とても重要なのが価値です。

価値と目標は似ていますが、少し違います。

たとえば、

「5kg痩せる」

は達成できる目標です。

一方、

「自分の健康を大切にして生きる」

は、達成して終わるものではありません。

ずっと進んでいける方向です。

これが価値です。

「自分は○○な人でありたい」から価値を探してみる

価値が分からないときは、

「私は○○な人でありたい」

と考えてみると分かりやすくなります。

優しい人でありたい。

勇敢でありたい。

誰かを支えられる人でありたい。

好奇心を持ち続けたい。

努力できる人でありたい。

大事なのは、世間から褒められる答えを探すことではありません。

自分にとって大切かどうか。

そこが基準です。

仕事・家族・健康など、自分が大切にしたいものを考える

価値は一つでなくても構いません。

人間関係。

仕事や勉強。

健康。

趣味。

社会との関わり。

さまざまな分野について、

「私はどうありたい?」

と考えてみます。

答えがすぐ出なくても大丈夫です。

むしろ、

「人生の価値はこれだ!」

と3秒で答えられる人の方が珍しいでしょう(笑)。

価値は迷ったときの人生のコンパスになる

価値が明確になると、人生で迷ったときの判断材料になります。

「この行動は、自分が大切にしたい方向へ近づくものだろうか?」

そう考えられるからです。

価値はゴール地点というより、人生のコンパスに近いもの。

道に迷うことはあっても、方向を確認できます。

価値に向かって行動することがACTのゴール

考えるだけではなく「ACT=ACTION」へ

ACTを学んで、

「なるほど!」

で終わってしまったら、少しもったいない。

大切なのは行動です。

自分の価値に向かって、実際に動いてみる。

私は、

ACTはACTIONにつながってこそ意味がある

と感じました。

失敗してもプランBに切り替えればいい

もちろん、行動したからといって全部うまくいくわけではありません。

失敗することもあります。

そんなとき、

「やっぱり自分はダメだ」

で終わらなくていい。

うまくいかなければ、

「じゃあ、次はどうする?」

と考える。

プランAがダメなら、プランB。

それでもダメならプランC。

人生、なかなか予定表どおりには進みません(笑)。

完璧を目指さず小さな行動を続ける

行動できなくなる理由には、

目標が大きすぎる。

必要な時間やスキルが足りない。

完璧を求めすぎる。

といったものがあります。

だからこそ、行動を小さくしてみる。

毎日30分運動できないなら5分。

本を1冊読めないなら2ページ。

大切なのは、行動の大きさよりも、

自分の価値の方向へ進んでいるかどうかです。

『ACT メンタルエクササイズ』を読んで感じたこと

ACTは人生で何度でも使える「心の料理方法」

『ACT メンタルエクササイズ』を読んで、私が面白いと思ったのは、ACTが単なる「悩みを消す方法」ではなかったことです。

人生では、いろいろなものを受け取ります。

楽しい経験もあれば、嫌な経験もある。

自信がある日もあれば、不安な日もある。

その材料を、

「どう扱って生きていくか」

を学ぶのがACTなのだと思います。

料理に少し似ています。

人生から渡された材料そのものは選べないことがあります。

でも、

その材料をどう料理するかは工夫できる。

ACTは、人生で何度でも使える「心の料理方法」のように感じました。

不安がなくなってから行動する必要はない

私が特に印象に残ったのが、

不安を完全になくしてから行動する必要はない

という考え方です。

私たちはつい、

「自信がついたら挑戦しよう」

「不安がなくなったら始めよう」

と思います。

でも、その日を待っていたら、いつになるか分かりません。

不安があってもいい。

緊張していてもいい。

その状態のまま、小さく行動してみる。

この考え方は、日常生活でもかなり使えると思いました。

嫌な感情があっても人生を健康に生きることはできる

健康というと、

「調子がいい状態」

をイメージしがちです。

でも、人間が毎日絶好調というのは難しい。

悲しい日もあります。

イライラする日もあります。

不安になる日もあります。

だから、

嫌な感情がない人生を健康と考えなくてもいいのではないか。

嫌な感情があっても、自分にとって大切なことを見失わず、少しずつ行動していく。

それも一つの「健康な生き方」なのだと思います。

まとめ|ACTを使って「自分が大切にしたい人生」へ進もう

ACTとは、アクセプタンス&コミットメント・セラピーと呼ばれる心理療法です。

ACTでは、不安やストレス、ネガティブな思考を完全になくすことを目指すのではありません。

思考と少し距離を取る。

嫌な感情があることを認める。

「今、この瞬間」に戻る。

そして、

「自分はどういう人でありたいのか?」

という価値を考え、その方向へ行動していきます。

私は『ACT メンタルエクササイズ』を読んで、

心を健康にする=いつもポジティブでいることではない

というところが特に印象に残りました。

人生では、嫌なことも起こります。

不安もなくなりません。

頭の中の「マインドさん」も、おそらくこれからずっとしゃべり続けるでしょう(笑)。

それでもいい。

「また何か言ってるな」

と気づきながら、自分が大切にしたい方向へ一歩進む。

運動や食事で体の健康を整えるように、ACTという心との付き合い方を知っておくことも、人生を健康に生きるための一つの方法なのではないでしょうか。

まずは今日、

「私はどんな人でありたいだろう?」

と考えるところから始めてみてもいいかもしれません。

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